2021年大会。ギャラリーが固唾をのんで見守った最終18番ホールで、劇的なイーグルVを果たした。「見ていてハラハラドキドキの面白いゴルフができたと思います」。優勝会見で、渋野日向子は笑顔で振り返った。 【思い出フォト】劇的イーグルでこのガッツポーズ 首位のペ・ソンウ(韓国)とは2打差。“イーグルしかない”という絶体絶命の状況で迎えた最終ホール。ドライバーを振り抜いたティショットは、ピンまで198ヤードのフェアウェイへ。完璧な一打で3番ウッドではなく7番ウッドを選べる距離を残すと、左足下がりのライから“逃げずに狙っていくしかない”と2オンを敢行。イーグルパットは7メートル。息をのむ展開となった。 結果はショート。「すげー悔しい。“う〜”って顔してましたよね(笑)」。それでもバーディで上がり、この時点ではまだ1打差。ところが、首位のソンウが短いパットを外し、まさかのボギー。プレーオフへと突入した。 衝撃の一打はこの延長戦で生まれた。ピンまで221ヤード。勝負のセカンドショット。「最後は“いけいけゴーゴー”でした」と振り返るように、迷わず3番ウッドを選んだ。ピン左手前のバンカー越え。難しい状況でも、渋野は一切ためらわなかった。 放たれたボールはバンカーを越え、グリーン手前に着弾。そこから転がり、ピン左3メートルにピタリ。「もう一生打てない(笑)」と語ったこの一打は、ライバルの戦意をも奪うほどのスーパーショットだった。 「右から寄っていけばいいかなと思ってたけど、自分が向いた方向がピンに近かった。ひっかけてもバンカーに収まるかなと。クッションの位置も狙ってないです。あわよくばそこに落ちてくれればと」 その言葉通り、完璧な位置につけると、続くイーグルパットを真ん中から沈めてみせた。ソンウにバーディパットを打たせる隙もなく、劇的な逆転優勝。3週前の「スタンレーレディス」に続くツアー6勝目を飾った。 きっかけは同年6月の「KPMG全米女子プロ」。上がり2ホールでバーディ・イーグルを奪い、ギリギリで予選通過した際、ギャラリーからかけられた言葉だった。 「面白いゴルフをしてくれてありがとう」 その一言が、渋野の心に火をつけた。“見ていて面白いゴルフをしたい”という想いは、あの日の18番で確かに形になっていた。