「どこがナイスショットやねん！」／マナー違反警察24時 容疑File.16 不適切発言

【説明（ディスクリプション）】
「どこがナイスショットやねん！」――この一言に、今日のゴルフ界の“マナー崩壊”が凝縮されている。かつてゴルフは“紳士のスポーツ”と呼ばれ、プレー中の所作や言葉遣いにこそ人間性が表れるとされていた。しかし、セルフプレーが主流となった現代のゴルフ場では、マナー違反が日常茶飯事になりつつある。その中でも特に多いのが、“見てもいないのにナイスショットと言う人”。この何気ない一言が、時に同伴者を不快にし、ラウンド全体の雰囲気を壊すことすらある。
今回の「マナー違反警察24時」シリーズ第16回では、この“口だけナイスショット”という行為にスポットを当てる。実際に多くのゴルファーが経験しているこの現象。ティーショットが林の中へ吸い込まれていくのに、後ろではスコアカードを眺めながら“ナイスショット！”と声を上げる――そんな光景が今、ゴルフ場では珍しくない。見もしないで褒めるという行為は、一見フレンドリーなようでいて、相手にとってはむしろ失礼。しかも、後になってボールがOBゾーンに消えていたと知ったときには、その“ナイスショット”が皮肉に聞こえてしまうのだ。
このような無意識の言葉は、ゴルフの空気を一瞬で変えてしまう。スポーツはプレーだけでなく、言葉のタイミングや雰囲気作りも重要だ。特にゴルフは、集中と静寂、そして思いやりが求められる競技。打球の行方をきちんと見守ることは、同伴競技者への最低限の礼儀であり、フェアプレーの基本でもある。
たとえば、もし自分がドライバーショットを失敗して林に打ち込んだとしよう。その瞬間に後ろから「ナイスショット！」と軽く言われたら、どんな気持ちになるだろうか？ 思わず笑うかもしれない。しかし、心の奥ではきっとこう思うはずだ――「ちゃんと見てから言ってくれよ」と。つまり“ナイスショット”という言葉は、相手のプレーをきちんと見届けた上で初めて意味を持つ。
ナイスショットとは、技術を称える言葉ではなく、努力や瞬間の輝きをたたえる言葉。そこには、目で見て心で感じる誠意が必要だ。打球を見もせずに口先だけで褒めるのは、相手に対する敬意の欠如にほかならない。どれだけ上手にプレーしても、マナーが欠けていては本当の“良いゴルファー”とは呼べない。
セルフプレー時代のゴルフでは、キャディが同行しない分、プレーヤー同士の協力が何より大切になる。誰かのボールを追うこと、落下地点を確認してあげること、それこそが同伴者への思いやり。そうした心の余裕こそが、気持ちの良いラウンドを作り上げる。逆に、自分のスコアやスマホに夢中で他人のショットを見ない人ほど、“ナイスショット！”という言葉を軽々しく使う傾向がある。
この問題の根底には、マナーよりも雰囲気重視という風潮があるのかもしれない。場の空気を和ませようとする気持ちは理解できる。しかし、気づかないうちに相手を傷つけるような言葉を投げてしまうなら、それは本末転倒だ。コミュニケーションの本質は、相手の立場を思いやること。ゴルフ場での一言一言が、その人の人間性を映す鏡でもある。
また、最近ではSNSや動画配信などで「ナイスショット芸人」のような存在も登場している。面白おかしく言うのは悪いことではないが、それが“現場”でも通用するとは限らない。笑いよりも、まずは敬意。これがゴルフの根本的な精神だ。
“ナイスショット”を言うこと自体が悪いわけではない。
問題は、そこに「心」があるかどうか。
ボールの行方を追い、ショットの質を感じ取り、仲間の頑張りを称える――その瞬間に自然と出る“ナイスショット”こそ、本物の褒め言葉だ。
マナーとは、ルールではない。
それは“他人への思いやり”の積み重ねだ。
それが欠けたとき、ゴルフはただの競技に成り下がる。
本企画「マナー違反警察24時」は、そんな“現行犯”を取り上げながら、ゴルファー一人ひとりに問いかけるシリーズだ。
「あなたは本当に見ていますか？」
「あなたの“ナイスショット”は、心からの言葉ですか？」
ゴルフというスポーツを美しく保つために、いま一度考えてみたい。
言葉は、スイングよりも強い影響を持つことを。
“ナイスショット”の一言が、相手の心を温めることもあれば、冷やしてしまうこともある。
だからこそ、次にゴルフ場で「ナイスショット！」と言うときは、その一打をしっかりと見届けてほしい。
林に消えても笑顔で「次いこう」と言える人こそ、真のゴルファー。
見てもいないのに口先だけの“ナイスショット”。
それには、今日もイエローカードを掲げた。
――「どこがナイスショットやねん！」
この一言に、すべてのマナー違反ゴルファーへの警鐘が鳴り響く。
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