2025年7月27日、スコットランド・ダンドナルド・リンクスで開催された「ISPS HANDA スコットランド女子オープン」最終日。リンクス特有の風が吹く難コースの中、渋野日向子はまた一歩、復活への階段を登った。
3日目と同様に「72（イーブンパー）」でまとめた彼女のスコアは、決して目を引く数字ではない。しかし、その中に詰まっていたのは、技術よりも精神、勝利よりも「挑戦」というテーマだった。
前半は2バーディ・ノーボギーと完璧な滑り出しを見せた渋野。かつてのスマイルシンデレラの面影を思い出させるような、リズムと自信のあるプレーだった。しかし後半、スコットランド特有の風が彼女のリズムを狂わせる。6番パー3で初ボギー、続く7番パー4でダブルボギー。それでも、最終9番で奪ったバーディは、渋野の意地とプライドが込められた一打だった。
試合後のインタビューでは、感情を抑えきれずに涙をこらえる姿も見られた。「やっと自分らしいゴルフができた気がする」「もっと良くなれると思った」──そんな言葉からは、過去の栄光と現在の苦悩、その間で揺れ動く彼女の心が垣間見えた。
この大会は、来週の海外女子メジャー「AIG女子オープン（全英女子オープン）」の前哨戦。予選通過すら叶わなかった過去数試合から一転、今回は5試合ぶりの予選通過。渋野にとっては、小さくとも確実な“第一歩”であり、次の挑戦へとつながる大きな意味を持っていた。
また日本勢では、山下美夢有が安定したゴルフで13位タイにつけ、日本人トップ。岩井明愛は「67」のビッグスコアで15位タイ。勝みなみ、竹田麗央、吉田優利と続き、それぞれが持ち味を発揮しながら戦った。
優勝争いは、イングランドのロティ・ウォードと韓国のキム・ヒョージュがトータル20アンダーで首位タイ。ウォードにとってはプロデビュー戦でありながら堂々のトップ。そこに立ちはだかるのはベテランのヒョージュ。まさに“新旧対決”の様相だ。
賞金総額200万ドル（約2億9337万円）、優勝賞金は30万ドル（約4400万円）。この戦いの舞台は、単なるゴルフトーナメントにとどまらず、選手たちのキャリア、そして人生をかけた真剣勝負の場である。
渋野日向子は今、迷いの中から抜け出そうとしている。その姿は、かつて彼女が全英女子オープンを制したあの日とはまた違う、深みと人間味を帯びている。インタビューで流れた涙は、諦めではなく希望の証。
「まだ終わっていない」──そう言わんばかりに、彼女は次なる舞台を見据えている。2025年全英女子オープン。そのティーグラウンドに立つ渋野日向子の目には、必ずや新たな光が宿っていることだろう。
この大会で得た自信と反省、そのすべてが、彼女を次のレベルへと導く鍵となる。成績表では測れない価値が、この4日間に詰まっていた。世界が再び彼女に注目する日は、そう遠くない。
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