千葉県・富士市原ゴルフクラブで行われた「カストロールレディース」初日、ルーキー・西澤歩未（にしざわ あゆみ）が見せた堂々たるプレーが注目を集めている。首位と1打差、5位タイと絶好のスタートを切った彼女の陰には、ある“秘密兵器”の存在があった。それは、彼女が契約するミズノが手がけた、まだ正式には発表されていないプロトタイプのドライバーである。ヘッドには「PROTOTYPE」と刻まれ、ツアー関係者の間でもその詳細は一切明かされていない“謎の一本”だ。
それでも、西澤はこのドライバーを手にすることで、新たな自信とゴルフへの向き合い方を手に入れた。「顔がいい」「出球のイメージがしやすい」「思った方向に飛んでくれる」と語る彼女の目には、信頼と期待が宿っていた。このクラブを明治安田レディスから本格的に使用しはじめ、そこからプレーの質が一変したという。
今季は、ステップ・アップ・ツアーで6試合連続予選落ちという苦しい時期も経験。プロとしての自信が揺らぐ中、試行錯誤の末に見つけたのがこのドライバーだった。6月の「ニチレイレディス」では2位発進を記録し、それが自信に繋がった。「悪かったわけではない」と語る最近の2試合では決勝進出を逃したものの、内容は大きく変化し、着実に前進していることが分かる。
この日、西澤はパーオン率88.8％（18ホール中16ホール）という高い精度でショットを重ねた。「薄い当たりも多かった」と振り返るが、それでも大きなミスにはつながらず、安定した内容を維持できたことは、ドライバーの正確性が支えていた証だ。
さらに注目すべきは、同じく2アンダー・8位タイで上位につけたプロ2年目の村田歩香も、同じプロトタイプのドライバーを使用している点だ。村田も「まっすぐ飛んでくれる」と高く評価しており、ミズノの新作がもたらす可能性は、男女問わず広がっているように感じられる。
富士市原ゴルフクラブは、フェアウェイが絞られたホールが多く、ドッグレッグも随所に見られる戦略的なコース。左右に外すと即座にOBやトラブルに見舞われるため、ティショットの安定性が何よりも重要となる。西澤は「右も左もダメというホールが多い」と語るが、その厳しさを乗り越えるには、信頼できる道具とそれに応える技術が必要だ。
プロ1年目、彼女のこれまでの最高順位は、7月のステップ・アップ・ツアー「ロイヤルメドウカップ」で記録した17位。今大会では、それを上回る成績が期待されるだけに、初日のこの位置取りは非常に大きな意味を持つ。
「初日はいい位置でも、2日目でスコアを落とすことが多いので、明日も攻めすぎずにいきたい」と慎重さを忘れない西澤。その冷静さと客観性もまた、ルーキーとは思えぬ落ち着きだ。
今回の結果は偶然ではない。信頼できるクラブ、経験を糧にしたメンタルの成長、そして日々の努力。そのすべてが結びつき、初日の躍進につながったのだ。道具をただの“モノ”としてではなく、“仲間”として迎え入れたことで、彼女のゴルフは明らかに変わった。
彼女の視線の先には、ピンだけでなく未来が見えている。未発表ドライバーとともに歩むルーキーの快進撃に、今後も大いに注目が集まりそうだ。
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